魔法と剣士の狭間で魅せる!漫画「剣士を目指して入学したのに魔法適性9999なんですけど!?」の魅力をネタバレ込みで徹底解説!

『剣士を目指して入学したのに魔法適性9999なんですけど!?』は、原作の年中麦茶太郎のライトノベルをiimAn&惟丞の作画によりコミカライズ化した作品です。以下では、物語の魅力をネタバレを踏まえながら紹介していきます。

剣士を目指して入学したのに魔法適性9999なんですけど!?(1) (ドラゴンコミックスエイジ)

主人公は9歳の天才少女。剣士を目指すのだが、魔法に圧倒的な才能を持つことが発覚し・・・

「剣士を目指して入学したのに魔法適性9999なんですけど!?」は、タイトルにもあるように主人公の剣への熱い思いをベースに物語が展開されていき、キャラクター達の繊細な心理描写もしっかりと行われている点が魅力的な作品です。

主人公は9歳児のローラという神レベルの能力を持つ超天才少女です。彼女は剣士の父親と槍遣いの母親を持ち、幼くして両親から前衛の魅力や技術を教え込まれた前衛のサラブレッドです。前衛のみのパーティで数々の冒険者としての偉業を成し遂げた両親への敬意と憧れに加え、父親の「魔法なんて軟弱者で卑怯者」という考え方の下で育ったこともあり、剣士になりたいと熱望していました。


両親や自分が所属する集団に与えられた願望や理想を自分の願望と勘違いして追い求める事例や悲劇はどこの世にもよくありますが、この作品の主人公ローラは本当に心の底から剣で戦うことが楽しそうに生き生きと描かれていて魅力的です。しかし、同時にこの小さな女の子が魔法に対する反射的な拒絶、恐れを抱く描写はとても痛々しいものがあります。ローラが持つ一種のトラウマのような価値観が物語が進むにつれてどのように変化していくのかも必見です。

ローラは9歳で王立ギルドリア冒険者学園に入学します。両親以外にも憧れる相手がおり、それがその学園を創設したカルロッテ・ギルドレアという人物でした。学園は新人冒険者の高い死亡率を嘆き教育を充実させるべく設立されたというカルロッテの理念に触れられていて、そこに惹かれるローラの心の動きがあり、そのような細やかな設定が度々登場するのでより物語に入り込ませてくれます。

新入生のはじめての集まりで、新入生達のステータスをひとりずつ数値化して表示する機械によって、ローラの剣士となるという夢は崩れてしまいます。剣士の才能も学園設立以来最強などと飛びぬけていましたが、魔法適正9999と圧倒的な才能を持っていることが発覚したため、剣士になるための戦士学科ではなく、魔法を学ぶことに特化した学科に入ることになってしまったのです。

夢を諦めきれず周りと衝突することも・・・

主人公含め、キャラクター達が非常に魅力的に描かれています。主人公が大変な能力を持った天才であるにも関わらず、気取ったり奢ったりする様子もなく、9歳児らしい純真さや真剣さが全面に出ています。

主人公は魔法のすさまじい能力には興味がなく、ただただ憧れていた剣士になるためにはどうすればいいかと考えている一生懸命さが可愛らしいです。主人公の友人でありライバルにもなるキャラクターが登場しますが、強くなること、成長することに前向きです。

結局、ローラは魔法適正9999というぶっ飛んだ数値を叩き出してしまったので魔法学科に渋々入りましたが、ローラの長年の夢を一旦諦めてそれを受け入れる流れも丁寧に描かれています。学園の教師は戦士学科への変更を願い出るローラに対して、能力の高さと学園の期待という背景から実質的に変更は難しいことをしっかりと伝えた上で、魔法の面白さも必ずあるので一度挑戦してみようと提案します。それでもどうしてもローラが嫌だった場合は、再度相談するようにと伝えています。教師のケアがしっかりしていることや、9歳であるローラがその申し出を受け入れることが精神面が成熟していることを伺わせます。

他の生徒との関係性も魅力的です。例えば、最初は見下していたそこそこ能力の高い魔法学科の女子生徒シャーロットも、ローラの実力を目の当たりにした後は思い直し、仲良くなっていきます。


ローラはその後も夢を諦めきれずに剣士の訓練を受けようと動き、物語が進むにつれて、徐々に自分の主張をするようにもなるので、そこも可愛らしくて必見です。ただし、主張を飲ませるために魔法学科の教育者側と戦闘に突入するシーンでは、「自分より弱い人に教わることはありません!」と言ったり、とても9歳の力ではない最強さを見せつけます。そのギャップも楽しめる作品です。また、主人公は魔法を発動させるだけで恐れていましたが、学園で学ぶことですっかり自分の力として使いこなしており、大変生き生きとしています。

戦いばかりではなく、家事や温泉シーンなど日常シーンも充実!

魔法などの異世界の設定が生かされておりながら、料理などの家事をするシーン、温泉でまったりくつろぐシーンなど、日常的な和やかな場面もあるので癒されるような描写がされています。

素直でひた向きに頑張る主人公とその周囲との関係性は丁寧で繊細な部分もあるのですが、全体的にギャグテイストでほんわかとした雰囲気です。物語の見せ場やアクションシーンは大味で描いているので、メリハリがあるところも読んでいて飽きが来ない作り方になっています。ローラの行く末を含め、物語の展開が見逃せない作品です!